シャンパーニュ

2016年フランス研修旅行8日間の内でシャンパーニュの滞在期間は1日のみ。行きたいメゾンは色々あるけど全部回るのは無理!なので、まず行きたいところをリストアップしました。ルイ・ロデレール、ローラン・ペリエ、モエ・エ・シャンドン、アンリ・ジロー、テタンジェ…。シャンパーニュ大好きな私たちはとても悩みました。その中でもどうしても行きたかったのがこのピエール・モンキュイでした。

シャンパーニュ地方はフランスのワイン産地の中で最も北にあり、ぶどう栽培の北限(ランスで北緯49.5度)に近い場所に位置しています。パリから東へTGV(高速鉄道)で45分というアクセスのいい場所にあります。私たちはブルゴーニュの後に車で向かったので、その移動距離300kmくらいありましたが…。シャンパーニュの産地はランスとエペルネの町を中心として、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ(ピノ・ムニエ中心)、モンラーニュ・ド・ランス(ピノ・ノワール主体)、コート・デ・ブラン(ほぼシャルドネ)の3地区が中心となっています。

ピエール・モンキュイはコート・デ・ブランのメニル・シュール・オジェにそのメゾンを構えています。コート・デ・ブランは“白い丘”という名前の通り、ほぼ白ぶどうのシャルドネが栽培されている地域です。

一般的な大手のシャンパンメーカーが、農家からぶどうを買い取ってシャンパーニュを造る「ネゴシアン・マニピュラン(NM)」に対し、ピエール・モンキュイは自分で栽培したぶどうでシャンパーニュを造る「レコルタン・マニピュラン(RM)」という形態です。気になる方はボトルのラベルをご覧になって下さい。こちらではロゼ用の少量のピノ・ノワール以外は全て自社のぶどうでシャンパーニュを造っています。

ピエール・モンキュイの歴史は100年にも及び、代々家族だけでシャンパーニュ造りを行ってきました。現在は当主ピエールの娘ニコルさんとその娘のヴァレリーさんが主となっています。ニコルさんはピエールさんからノウハウを教え込まれ、現在はその情熱を娘のヴァレリーさんに引き継がれ、女性の作り手が2代続いています。

私たちは約束の9時半に到着しました。
立派な門から見えたのはベージュを基調とした二階建てで、ブルーの屋根と窓の回りをレンガで装飾した可愛らしい建物でした。
中に案内されると白を基調とした清潔感溢れるウェイティングルーム。テーブルの上には真っ赤なお花の植木鉢。小物なども女性らしいセンスのお部屋でした。すぐにヴァレリーさんが来て下さり、先にテイスティングさせて頂きました。

まずはサミュゼでも常に置いているスタンダードな“キュヴェ・ユーク・ド・クルメ”。花の蜜を思わせる甘みとシトラス系のフレーヴァーが心地良い。2番目の“キュヴェ・ピエール・モンキュイ・デロス”は全部グランクリュの葡萄を使用した緻密で繊細な味。3、4番目は2005年と2006年の“ミレジム”と補糖をしない“ノンドゼ”。シャンパーニュは色々なヴィンテージのワインをブレンドして均一な味を作り出すのが一般的ですが、特に葡萄の出来が良い年は、あえてその年の葡萄のみで“ミレジム”を造ります。“ノンドゼ”は“ミレジム”が造られた年に必ず造られる訳ではないので、この飲み比べは特に面白かったです。“ミレジム”は熟したぶどうの味が濃く、どちらが好きかは好みが分かれるところでした。最後はロゼ。ベリー系のニュアンスが口の中を優しく包み込みます。

全部で7種類のテイスティングを終え、カーヴの見学へ向かいます。地下へ下るごとにひんやりと気温が下がるのを感じます。しっとりとしたカーヴ独特のカビや湿気などが混ざり合った匂い。さすが1889年に設立された歴史ある建物で、地上に出ている建物以上の広さのカーヴです。

アーチ状の天井には白熱灯が吊るされ、カーヴ内を優しく照らしています。幅3メートルほどの通路の脇には、ルミアージュ(動瓶)を行うピュピトルと呼ばれる穴の空いた台がずらりと並べられています。これによって澱を瓶口に集め、溜まった澱を凍らせて取り除く事ができます。これは主にミレジムなどに使用し、ジャイロ・パレット(ルミアージュの機械化)と併用して動瓶を行っています。

カーヴの奥に向かうにつれ、18世紀後半のワインの瓶が沢山出てきました。ホコリもカビもヴィンテージものに覆われたシャンパーニュ。自分のバースデービンテージを見付け写真を撮っていると、ヴァレリーさんも同じ年生まれと判明。大人っぽいので当然年上だと思っていましたが、同年代が頑張っている姿を見ると、私も力を貰えたような気がしました。

カーヴの見学を終えテイスティングルームに戻ってきました。するとヴァレリーさんの粋な計らいで先ほどのシャンパーニュで気に入ったものを飲んでいいと言って下さり、ウェルカムならぬカムバックシャンパーニュを頂きました。グラン・クリュらしい力強さと女性らしい華やかさ、どこかほっとできる、いつ飲んでも変わらずに美味しいシャンパーニュだと改めて感じました。

今回の訪問で、以前から大好きだったピエール・モンキュイがもっと好きになりました。女性が活躍しているところがサミュゼと似ていて、これからも応援して行きたいメゾンです。

2017年09月13日